243号・2・二つ目の課題は建築士法改正
・建築士法改正の概要
国土交通省は、近年の一級建築士試験は、受験者数の急減に加え、業務を行っている建築士の高齢化が進んでおり、このままの傾向が続く場合、建築物の安全性の確保等において重要な役割を担う建築士人材の確保が困難。という事から、建築士法の一部を改正する法律(平成30年法律第93号)の施行日が令和2年、2020年3月1日から施行されています。
この改正は、建築士人材を継続的かつ安定的に確保するため、建築士試験の受験機会を増やすことを目的として、20年の建築士試験から、「実務経験にかかる記述の削除」、「学科試験免除の仕組み」、「実務経験の対象業種の拡大」等が図られて、新しい受験資格に基づく建築士試験がスタートしています。
実務経験にかかる記述の削除では、建築に関する指定科目を修めて大学卒業した場合の例として、一級建築士試験を受験する場合、改正以前の制度では大学卒業後に建築実務経験を2年以上経たうえでなければ受験できなかったが、改正後は卒業年から受験できるようになりました。
試験は、学科と製図があり、学科試験が合格しないと製図試験は受験できません。つまり、学科試験合格後、同年及び同年以降の製図試験に合格すれば、その前後の実務経験年数の合計が2年以上あれば免許登録申請ができるようになり、少なくとも2年は早く登録申請ができるようになりました。
・改正の背景
・一級建築士受験者数グラフ(下図)
*国土交通省の資料より転写。
03年までは約5万人で推移していた受験者数が15年には3万人以下まで急激に減少していることが分かります。
・年代別所属建築士数グラフ(下図)
*国土交通省作成資料より転写。
「登録している約37,3万人のうち所属建築士約14万人の年齢別内訳」
35歳以下の若い世代では少ないことがわかります。反面、50歳、60歳が最も多く、今後この世代がリタイヤ
していくので建築士が不足するといわれています。
このように、このまま対策を講じなければ、少子化、若い受験者の減少にともない合格者の減少、さらに60歳以上の建築士がリタイヤしていく中で、今後、建築士が不足していくことが考えられることから、卒業後の若い受験者の数を増やし、継続的かつ安定的に建築士の人材を確保したいという事からも改正されたようです。
つまり、受験資格である実務経験を試験合格後とし、卒業後すぐに受験できるようにすることによって、早いうちに建築士を目指してもらいたいと考えているようです。
・建築士法改正後、建設会社の建築士確保は重要な経営課題
21年4月1日現在建設業許可業者数は約48万社。
これに対して、建築士登録者数は
・一級建築士:373,022人
・二級建築士:779,810人
・木造建築士: 18,405人
合計 :1,171,237人
つまり、大、中、小規模一社当たり、一級 ・二級 ・木造建築士を含めて2,4人。
一級建築士に至っては0,8人しかいないという状況です。大規模企業や設計事務所が多くの建築士を保有しているので、小規模建設会社や地方の建設会社まで建築士は回ってこないというのが現実です。
・日経アーキテクチュアが19年6月に実施した調査では、回答した96社のうち8割以上が「建築士の確保」を経営課題に挙げています。
建築士不足では、民間、官公庁の受注規模や企業の事業規模によっては受注できなかったりするので、事業拡大のためには、建築士の数が必須です。また、事業経営が切迫している企業や後継者問題に直面している中小の建築会社、地方の建設会社にとって建築士確保は「背に腹は代えられない」ところもあり奪い合いの状況になってきています。 こうした状況になってくると、地方の建設会社や工務店では建築士の待遇改善などの対策を取らない限り、建築士確保はより一層難しくなってきそうです。
以下次回

