285号・地域工務店は、構造体で差別化を
このままでいいのか木造住宅284号の続きです。
ハウスメーカーや住宅工務店の営業、技術者は、構造体に使用されている樹種、樹齢、産地、原価のことについては、会社責任となっていてあまり関心がありません。実際のところ詳しく説明できる営業や技術担当者はいないといっていいでしょう。
そのことよりも、数値上の耐震性といっても耐震等級1か2か3かの説明、断熱性や気密性、ソーラーなどの省エネ性、無償、有償メンテナンス、保証内容など免責事項については熱心に説明してくれます。ただ、長期耐用年数については、なんとなくあいまいで漠然としています。
お客様も構造体や間取り、デザインはハウスメーカーや工務店任せで、関心あるのが新しいシステムキッチンやユニットバスの床排水、シャワー機能がどうのこうのと新商品に目を奪われています。会社もいかに内装や外装などの建材、住宅設備機器などのオプションで売り上げを増やせるかに熱心です。
住宅の国産構造体(合板を除く)は、輸入材に比べて1㎥当り2~3万円程度高いとはいえ38坪程度の家なら集成材で80~100万円、無垢材(30~50年物)で200万円程度の負担増です。高級キッチンにトリプルサッシもいいけれど、もう少し、お金を構造体に廻して長く住める住宅を建てるという理解が必要です。
そのことによって、50年の住宅寿命が100年になればその価値は十分にあります。とくに、その地域に根差して住み続ける必要のある人にとっては、長く住み続けられる住宅を建てることです。
そのためには、耐久性、耐震性の高い構造体は勿論のこと、台風や水害、浸水、崖、山崩れ、地盤沈下、液状化などの自然災害対策も考慮した建築計画を立てることや、将来を俯瞰してみて、次の世代への引継ぎやその時代の家族構成の変化、生活スタイルの変化、あきのこないデザイン、住宅設備機器の入替え、間取りの改変、増築などに対応できることを考慮して設計しておくことも大切です。
長期優良住宅制度が導入されて耐久性については30年といわれていたころからすると長寿命化しているとはいえ50~60年くらいが限界ではないでしょうか。住宅の寿命が欧米に比べて短命なのは、構造体や維持管理だけの問題ではありません。
実は、建て替えの理由の本質は、その時代の家族構成、生活スタイルの変化、設備機器の入れ替えに対応した間取りに改変できない、時代遅れのインテリア、エクステリアになってしまっているという事です。
80年代、私ら団塊世代の多くが郊外地に車スペース1台付住宅を建てました。その多くが当時、おしゃれといわれたプレハブ住宅です。あれから半世紀近く経年した今日、どうでしょうか。生活スタイルの変化による間取り、収納、空間の狭さ、2階トイレ、洗面はあきらめたとしてもキッチンやユニットバスなどの設備機器の入れ替えもできない、乾燥機も置けない洗面所、郊外地でも車庫スペースが1台限り、時代遅れの外観、これでは、リフォームのしようがありません。これでは、構造体に異常がなくても、この中古住宅は誰も買いませんよね。こうして、郊外地の住宅は今後も老朽化した空き家が増えるばかりです。
高耐久である条件として、耐震強度、大断面構造体であることはもちろんのこと、自然災害対策も大切です。そして、性能、機能性、ある一定の広さ、天井高さ、空間の大きさも確保したいものです。
何よりも大切にしたいことは、長い年月を経ても新鮮で飽きの来ないインテリア、地域環境と違和感のない上品な外観(エクステリア)デザインであることが大切です。
古民家や欧米などの古建築は、その地域にふさわしい外観、エクステリアデザイン、空間の大きさ、高耐久な構造体、使うほどに味わいの出る天然建材を多用しています。
そして、二代、三代と住み続けるためには、生活様式の変化に応じて、適切な改装、補修、修繕などの維持管理をすることなどで資産価値を上げる努力も必要です。
小住宅はともかくとして、農家、商家、地域に根差して住み続ける必要のある住宅、複数世代同居住宅、店舗付き住宅等については、これらのことを十分に考慮した設計計画にしておく必要があります。
地域の住宅工務店はハウスメーカーの販売戦略を疑い、地域ならではの差別化戦略をとることが必要。
戦後からの住宅産業成長期の変遷、現在の住宅の問題点と長期優良住宅の課題を検証したうえで、木の特性、千年以上と言われる堂塔建築、大断面構造の古民家、木造伝統建築などから多くのことを学び、木が持つ多くの特性を生かし、シンプルな間取り、外観(エクステリア)を基本理念として、大断面木造構造体も視野に入れて、高耐震、高耐久な住宅の開発も必要です。
ハウスメーカーと差別化が図れるのは、地元の気候風土、文化、地産地消建材など地域性を多く取り入れた耐震、耐久性の高い大型住宅、デザインに対応出来るのは、地元住宅工務店さんです。
2024・7・20
ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出 正廣