289号・木造大断面構造の薦め/50年先を俯瞰してみると・・・ 

敷地は狭い、家は35坪以下の小さい住まい、構造躯体はといえば断面3ミリ前後の軽量鉄骨、または10cm程度の集成柱、家の中は柱や壁だらけ、断熱性能の低下したグラスウール、外壁材は色あせて汚れた時代遅れのデザイン、内装は、貼りボテ、ビニールクロスに塩ビ製品の色あせた建材、設備配管も老朽化、これでは、家族構成の変化、ライフスタイルの変化、設備機器の変化にも対応できないので、50年以上も住めるわけがないですよね。いくら長期優良住宅といってもリフォームもできない、ましてや買ってくれる人さえいない住まいとなっています。

小住宅はともかくとして、地元密着の農業や商家、多世帯住宅、大型住宅は木造大断面住宅や重量鉄骨住宅をお勧めします。

・住宅は時代とともに劣化、変化する

50年、100年先を振りかえって見てみると50年前は1973年、100年前は1923年どうでしょうか。リビングソファ、システムキッチン、ユニットバスがあったでしょうか。このように、50年、100年先も今の生活様式が続いているでしょうか。

住宅のかたちは、30年もすればデザイン、間取り、建材、住宅設備機器、ライフスタイルは大きく変化し時代に対応できない住まいとなります。

・外壁材は多様化、次の時代のリフォームに対応できるでしょうか

例えば、外壁のサイディング張り、サイディングが出始めたのは90年頃からで、95年、阪神淡路大震災での外壁モルタルは剥がれ落ち、左官職人不足などから、施工が簡単なサイディングがよく使われるようになってきました。この30年近くの間に、リシン吹付柄に始まり、横板目柄、タイル柄、ボーダ柄、石目柄、モザイク柄、キューブ柄、今は、厚みのあるロック柄というように流行は変わっています。10年もすれば、すっかりデザインは変わります。

また、大手ハウスメーカーはダインコンクリート、セラミックパネル、ALCパネルにコンクリート系パネルなど等、独自商品を開発していて色・柄も見飽きたころに、自動車などと同じようにマイナーチェンジしています。これでは時代遅れの住宅になってもおかしくありません。

50年もこの業界にいるとサイディング柄や外壁を見ただけでいつの時代の建物か、どこのハウスメーカーが建てたものかわかります。このような業界なので、あと30年もすれば、サイディングや同じ外壁材があるかどうかもわかりません。

・50年後、小住宅では住宅設備機器などの修理はできてもリフォームは対応できない

アルミサッシを見ても高さ、1、8m・2m・2、2m、今では2,5m・2、7mとサイズがどんどん大きくなって豪華になってきています。豪華になるのは仕方ないとしても、今の大半の木造住宅の天井高さは2、5m以下、将来2、7mのサッシに変えたくても、階高不足で構造的にも取り換えができません。

また、戸建て住宅用UBが出始めた70年、当時の浴室の大きさは、UBサイズでいえば1216が一般的でした。90年代ころになると、UBは1616が当たり前となってリフォームで取り替えたいとなって大変でした。まず、壁のタイルを剝がしてみると大半の浴室の壁は結露で腐っていて辛うじて柱で持っているという状態、更に1616が入らないので洗面所との壁か外壁を撤去するしか設置できない状態でした。今後、高齢化がさらに進んで介護も機械化されると1616のスペースで大丈夫でしょうか。大阪万博では人間洗濯機が展示されるそうですが、小住宅では対応がむつかしいでしょうね。

それどころか、洗面所にしても平均的な住宅では洗濯機に洗面化粧台で1坪。乾燥機も置けない状態です。脱衣室やユーティリティスペースなど、とても作れません。

リビング、ダイニング、キッチンのスタイルも変わり、小さなLDKではキッチンの取り換えも難しい状況です。

・新建材では、住まいは劣化するばかり

天井、壁はクロス貼り、継ぎ目や剥がれが目立ち、建具にしても木目印刷シート張りの建具、1ミリにも満たないツキ板張りのフローリング、20年もすれば色あせ、シートもはがれ落ち、床フローリングも下地合板が見え始めてきます。無垢材と違って使うほど哀れな状態に、使うほどの味わいどころではありません。

建材の選定については流行デザイン、色、柄を追わないで、飽きのこないデザイン、丈夫で長持ち、使うほどに味わい、愛着の持てる製品を選びましょう。

欧米では、窓、建具、床材など、取り換えの難しいものには初めから、しっかりとした建材を選んで、何度も塗装の上塗りを重ねて味わいのあるものになっています。この時は高くついても、将来取り替え、張替のことを思うとかえって安上がりと言えるでしょうね。

・長期優良住宅の言葉に騙されていないか

長期優良住宅は反対ではありませんが、前記のように劣化の速い建材や断熱材など経済効果の高い工業製品が優先で、特に断熱材であるグラスウールは、防湿層、防湿シートの施工はむつかしく、湿度の高い日本の気候風土にも適していないにも関わらず、グラスウールがベースとなっています。欧米では、あまりよくない断熱材料と言われながらも、日本ではコストパフォーマンスが高く扱いやすいという利点があってハウスメーカー、多くの住宅工務店が使い続けています。グラスウールは、時とともに断熱効果は低減していきます。また、長期にわたり保水し続けると構造体を腐食させてしまうという観点からも、長期優良住宅という以上、ほかの断熱材の選択肢があってもよいと思います。

・住宅の必要耐久年数は

*長期優良住宅認定基準では、「数世代にわたり」、劣化対策では「2世代で50~60年、3世代では75~90年」の耐久性となっています。

長期優良住宅認定制度となっても、ハウスメーカーの住宅の外見は、見栄えはよくなってきているが、耐震金物や、制振装置を補助としただけで柱、梁の構造断面は何ら変わっていません。

法定耐用年数と耐久性はイコールでないとしても、法定耐用年数表では軽量鉄骨は19年、木造で22年のままです。フラット35の住宅ローンが35年、親子住宅ローンフラット50が50年なので、推定すればそれくらいが妥当なところでしょう。

・戸建て注文住宅の取得者平均年齢は39歳

2023年の建て替えを除いた、一次取得の注文住宅の世帯主平均年齢は39歳です。推定ですが第一子が10歳の時に購入として。

日本人の23年厚生労働省公表の平均寿命年齢は男性:81、09歳 女性:87、14歳。男、女ともに初めてピークアウトしました)。ただ、コロナ感染死亡者が増加した影響があるので、もう少し様子を見る必要があります)それはともかくとして、女性のほうが長生きなので87歳を基準として住宅の耐久年数を検討してみます。

計算をしてみます

①夫婦1世帯が生涯住み続けるとしたら・・・

 *39歳で住宅の新築、87歳−39歳=48年(≒50年)の耐久性が必要。

②親+子世帯、2代目10歳の子世帯が生涯住み続けるとしたら・・・

*39歳の新築時に2代目が10歳の時:87歳−10歳=77年。(≒80年)の耐久性が必要。

ところが実際には、長期優良住宅の耐用年数を50年とすれば、2世代目の子は50年−10歳=40歳で住宅ローンを借りて、構造体補強か建て替えとなります。

③親子+子世帯、子世帯の子が生涯住み続けるとしたら・・・

 *39歳で新築時に2代目10歳の子が30歳で出産の時:20年+87年=107年。(≒110年)の耐久性が必要。

ところが実際には、長期優良住宅の耐用年数が50年とすれば、三世代目の子は50年−30年=20歳で住宅ローンを借りて構造体補強か建て替えとなります。

以上から、長期優良住宅の耐用年数を50年とすれば、初代は辛うじて住み続けることが出来るが、2代目は40歳で構造体補強か建て替え、3代目は20歳で建て替えとなります。なので、長期優良住宅の数世代に渡ってというのは過剰表現に当たります。

仮に、長期優良住宅「劣化対策等級3の時」の耐久年数が75年~90年からすると、②の2世代ぐらいが住めればよいほうでしょう。

これではいつまでたっても日本人は、住宅ローンに追われて豊かさを享受することはできません。

ハウスメーカー、建材メーカーにとっては、短く住んで、建て替えていただくほうが回転は効いてメリットがあるので50年以上の長期優良住宅にはあまり積極的ではありません。もともと、長期優良住宅はハウスメーカーの既存の技術を尊重して対応できる内容になっています。そこに、中小の工務店を排除できないので、間伐材を用いた集成材の推進の意図もあり、付け加えとして木造住宅の最低技術基準を標準化したものと思われます。

それが最近になって、ハウスメーカーは、着工数が年々減る中で、構造体の量産効果も減じてきているので、木造住宅のほうがメリットも多く積極的に木造住宅に参入しています。いずれ、軽量鉄骨住宅はなくなるでしょう。

真の意味で、高耐久大断面(15センチ角柱)木造住宅で対応できるのは住宅工務店です。

2024・8・20     ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣