336号・着工減の要因は、駆け込み、制度変更だけの問題か

1.現状確認できる住宅着工件数データからだけでは受注状況の手が打てない

住宅着工戸数

 国交省は、2025年8月の住宅着工戸数は、前年同月比で 9.8%減 の約 60,275戸。5か月連続の減少と公表。

 2025年3月には前年同月比で39.6%の増加 の89,802戸。駆け込み着工の反動減が続いている、と説明。制度改正(新築住宅  に省エネ基準適合を義務化、4月施行)との関係と説明。その反動で、9月以降も1桁数字のマイナスが続くとみている。

本当に制度改正などだけが原因でしょうか

 駆け込みで着工が大幅に増えた反動だけが原因でしょうか。確認申請受付、契約件数をつかんでおかないと、手の打ちようがありません。残念ながら、住宅メーカーやプレ協、住宅産業新聞、業界団体が公表する「契約・受注データ」しかありません。しかも、メーカーの契約件数(契約後のキャンセルや決算対策込)は、他社にらみ、投資家を対象としているのであてにはできません。ましてや、着工数の2/3が工務店の施工。上記団体のデータだけでは、対策の打ちようがありません。

 米国では「契約指標」を重要視

  米国では、たとえば:

・New Home Sales(新築住宅販売件数)

・Housing Starts(住宅着工件数)

・Building Permits(建築許可件数)

3つが翌月の19日に着工数と許可件数が同時に公表(日本では着工数のみ翌々月の1日)。

契約=販売=需要実勢が着工より先に動く指標として重要視されています。

 日本では、許可件数に至っては、2年遅れ、最新でも 令和5年(2023年)まで のものしかありません。こんなことでは、住宅対策などはできませんよね。

2.反動減だけでは説明できない要因

 駆け込みの反動減が大きな要因であることは確かですが、受注動向が読めていなければ意味がありません。下記のような要因が原因であれば、気が付いて見れば、手遅れ状態になる可能性があります。

1・コスト上昇・資材価格高騰

2・金利上昇・融資条件の厳格化

3・低所得、中所得では住宅ローンが組めない

4・婚姻数の減少・少子化・人口減少

5・消費者のマインド低下

 実際、いくつかの報道では、事業者側から駆け込みや制度変更だけの問題ではなく、このままいくと消費マインドが低下してしまう懸念しています。

3・住宅市場の構造的要因

新築住宅の契約数は全体として低下傾向

 ただ、高額住宅にシフト替えしている大手ハウスメーカーは、着工数減でも売上額、利益は増加。

 半面、中小工務店は、販売価格、利益を下げないと受注できない状況。

住宅価格の高騰

 ・建材・人件費上昇、施工コスト増で新築住宅の販売価格が上昇。

 ・若年層や中間所得層が手を出しにくくなり、需要が縮小。

 ・円安は、輸入木材が上昇。

住宅ローンは上昇傾向

 ・インフレ化傾向になると、必ず政策金利、住宅ローンも上昇する。

 ・中小企業の給与所得がインフレ率の上昇に追い付かない。

婚姻数の減少・少子化・人口減少

 ・住宅需要の総量自体が確実に減少。

 ・地域によっては過剰供給・空き家増加が顕著。

ライフスタイルの変化

 ・面積、工事代金等総額抑制でコンパクト住宅、平屋住宅、リノベーション、中古住宅活用進む。

 

空き家の増加

 ・地方では、人口減少、空き家の増加。

4・姉歯構造計算偽装問題時に酷似

 05年11月、確認申請の構造審査が大幅に遅れて、着工ができず、06、07年度は売り上げ、資金回収が遅れて決算にならないときがありました。ようやく回復し始めたころ、08年9月リーマンショックがあり、多くの工務店が倒産しました。

 今回は何があってもおかしくない国内外政治、世界経済状況、○○ショックのようなことがあると決定的なダメージを受ける可能性大ですよね。政府は何か対策を講じる用意があるのでしょうか。

政府の対応策

 現在、政府は以下のような対策を講じています:

  1. 建築確認審査の効率化:確認申請の手続きの簡素化や、審査体制の強化が検討されています。
  2. 中小企業への支援:資金繰り支援や、経営改善のための助成金・融資制度が提供されています。
  3. 業界団体との連携:業界団体と連携し、情報共有や共同での問題解決に取り組んでいます。

 しかし、これらの対策が十分に効果を上げるためには、実際の現場の声を反映させた柔軟な対応が求められます。

 一時的な助成金、融資制度があるとしても、住宅の高額化、金利上昇傾向、少子化による着工減は避けられません。受注のできない多くの工務店はリホームへの転換、廃業、業種転換、倒産が避けられないでしょうね。

5・生き残り戦略の選択肢

  1. 新築特化・高付加価値型
  2. リフォーム・リノベーション転換
  3. 空き家・不動産管理サービス参入
  4. 業種転換・異業種参入
  5. 合併・事業売却・廃業

  10人以下の零細工務店が圧倒的多数

 ・人材・資金・ノウハウの制約が大きく、変化への対応が難しい。

6・合併、M&Aを検討する工務店はほぼ皆無です。理由としては・・・

  • 社長の意思が強い

 創業者・オーナー社長の「自分のやり方・こだわり」を手放すことが難しい。

  • 経営文化の違い

 合併先との経営スタイルや現場文化の違いを受け入れにくい。

  • 零細規模のため経済的誘因が薄い

 10人以下規模だと、統合によるコスト削減や効率化のインパクトが限定的。

  • 地域密着志向

 地元顧客との信頼関係を重視するあまり、外部との統合に消極的。

 つまり、淘汰の波が来ても、自発的な合併や統合はほとんど期待できない 構造になっています。

 といった傾向があります。

 多くの住宅工務店さんのコンサルをしてきました。契約数は増加することはありません。何も対応できなければ廃業に追い込まれます。

 弊所では、販売支援、開業、再生、任意整理、廃業のお手伝いをしています。

             2025・10・10

            ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣