295号・伝統的工法による昔の木造建築は理にかなっていた

日本建築ともいえる法隆寺のような神社仏閣や、桂離宮に見られる数寄屋建築などは、伝統的な工法によってつくられています。特に、世界最古の木造建築である法隆寺は、1400年以上の時を経て、風、雨、雷、地震に耐えて現存している木造建築です。

「だからと言って木造建築は長持ちするのでお勧めです」というセールストークが有効かというと必ずしもそうではありません。木造建築は維持管理が悪いと大変デリケートな材料なので常時、人が点検、修理していなければ最も耐久性が低い建物と言えます。当時の姿、現存のまま数百年というという木造建築はありません。

毎年点検、数十年に一度部分的補修、100~200年に一度本格的な修理、改装が行われ、200~300年に一度大改築、再建築がされて今日に至っています。

小住宅等においては、人が居住していることが最低条件で点検、居住することなく10年も放置すれば腐朽し始めて、土に戻ろうとしていきます。

また、戦後の木造住宅の寿命が短くなったのは、昭和25年に制定された建築基準法に基づいて建てられていて、伝統的工法とは全く異なっているからです。では、木造建築はどのように変わったのでしょうか。伝統的工法の木の選び方や木の特性を活かした知恵を紹介します。

・木を買わず山を買え 

奈良、法隆寺大修復や薬師寺金堂復興などで多大な功績のあった宮大工棟梁、故・西岡常一氏の有名な格言「同じ山で育った木で一つの塔を作り、堂を作れ」があります。同じ種類の木でも異なった環境で育った木は性質が微妙に異なり、建物に狂いや歪が生じます。寄せ集めの木では数百年ももつ建物はできないといっています。

・一つの大木で家を建てる

一つの大木で一つの家が建てられれば最高ですね。樹齢300年くらいの大木であれば、家一軒位の材木は十分賄えたそうです。そうすると、狂いもそりも強度が同じですから、長持ちしていたのでしょう。

 ちなみに、今ではそういうわけにはいかないので樹齢30~50年(直径30~50㎝)の杉やヒノキの無垢材であれば、歩留まりを60%として試算すると、35坪程度の住宅で25㎥程度の木が必要です。

・乾燥材を使う

切り出したばかりの木は構造材としてすぐには使えません。木材は水を大量に含んでいると強度は出ませんが、乾燥度が高ければ強度は安定します。一般的に、構造体として使用する場合は含水率(その木材が含んでいる水分量のこと)18%以下が望ましいとされています。

・樹齢 ≦ 耐久年

樹齢30年以下の間伐材はまだ幼木で強度にはあまり期待できません。これを構造材として使用するのにはねじれ、曲がり、収縮があり問題があります。

耐久年も樹齢と同じく30年と言われています。つまり、30年の幼木の耐久年は30年、100年の成木は100年以上と言われています。

 

・様々な樹種の木材を使う木造住宅なら集成材のほうがまし

下図のような桧や杉、松、栂などの様々な無垢の樹種、間伐材、輸入材、集成材などの昆構造材で家を建てるのなら、集成材で統一するほうがまだまし。というのは、現在の集成材は、同じ山で育った同じ樹種を同じ断面にして家を建てるからです。

・地元の木を使う・地産地消

 昔の木造建築は、建てる地域で育った木を使用することが原則なので、木が受

ける気候風土の条件は変わらないので狂いや歪がほとんどありませんでした。

その中でも棟梁が良い木を見極め、さらに、北側の山で育った木は北側に、

南の山で育った木は南側に、更に南の光を受けて育った木は南に向けて、

北側は、水分が多く、南側は乾燥した状態なので、これを真逆に使用すると

どちらかに反りが出ます。

 さすがに、上図のような住宅はなくなりました。小住宅では集成材で十分だと思いますが、大型住宅や数代にわたって住み続ける必要のある住宅では、柱、梁の大断面(柱でいえば150×150)も検討すべきだと思います。ハウスメーカーでは対応がむつかしい、大断面木造住宅で差別化もいかがでしょうか。その対応ができるのは、地元工務店さんです。

2024・10・20

ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出 正廣