341号・耐震等級3の“罠”

 “耐震等級3の罠“構造体を集成柱12センチ以下にしたままで、耐震等級3で設計すると空間が制限され、間取りの可変性が無くなり、小住宅では、将来、家族構成の変化、生活スタイルの変化、設備機器の入れ替えにも対応できないという決定的な問題があります。

 しかも、定期的にメンテナンスをする必要があり持ち主にとっては生涯高負担が強いられています。これでは、高耐震住宅であったとしても片手落ちで意味がありません。

 これは長期優良住宅の「制度的な矛盾」で、最大の問題点は、「長期優良制度にしておけば安心」の虜になっていることに問題があると思っています。長期優良制度対応住宅は維持コストがかかる割には、間取り改変が難しく、デザインの陳腐化、長期に住み続けることが難しいという事にそろそろ気が付くはずです。

 これからの住宅は「高耐震+高耐久+ライフスタイルの変化」に対応、居住者でも点検、改修ができるかどうかがこれからの大きな課題です。

 本来、日本の古民家の間取りは大きく、構造体は大断面、床下は高く2代、3代住み続けることのできる高耐久住宅です。

 コストという大きな壁があるが、お客様も設備機器にはお金をかけるが構造体には関心がないという事を改め、設備機器などのコスト、間取り、シンプルな外観などの工夫をすれば少しの負担で大断面構造柱15センチ角を使用して、居住者でも床下点検ができる床高にすることは可能です。

 「耐震等級3 = 安全」

 だが可変性・寿命・住み心地 = 犠牲になっている。

 これでは本末転倒ですよね。

 本来「強い家=長く使える家」のはずが、実際は「強いけど時代の進化、変化、デザインの陳腐化、これらに対応できず、売却もできず、住み続けるか空き家として放置か解体しかない家」になっています。

 なぜこうなったのか(構造的な原因)

■ 耐震等級3の“罠”

 等級3を木造10,5、12センチ角柱集成プレカット工法で設計とすると・・・

  • 壁量だらけ
  • 直下率縛り
  • 吹抜不可
  • 開口制限
  • 間取り固定化

  結果、今は安全、将来リノベができない住宅になってしまう。

 これは「短期安全最適化」 であって「長期寿命最適化」ではない

 長期優良住宅の制度設計の失敗だと思います。

 木造集成プレカット工法

  • 細い柱(90・105・120角)
  • 構造合板で固める
  • 部屋を細かく区切る
  • 壁を抜けない
  • 床下が低い
  • リフォーム不能

 古民家・欧米型

  • 大型、大空間住宅では2X6工法(米国・北欧)
  • 太い広葉(堅木)柱、梁(ドイツ、フランス、イギリス等)
  • フレームで持たせる
  • 壁は間仕切り(非耐力)
  • 間取り変更は自由
  • 床下が高い
  • 何度でも改修可能

 長期優良住宅は、構造思想が古民家と真逆です。ここが決定的違いです。

 ■ 実は伝統的工法である古民家は日本の気候風土の理にかなっています

 古民家の大断面構造体は、建築学的にも合理的です。

 古民家は

  • 15・18・24・30センチ角柱で樹種は檜やケヤキ、栗など。
  • 大梁(松)
  • スパン飛ばし
  • 壁は建具中心
  • 外観はシンプル
  • 設備は後付け自由
  • 床下が高い

 なので、築100年でも普通に生活できる。

 そろそろ、地元工務店さんは、目覚める時期に来ていると思います。というのは、本来地元工務店は、その地域に最適な暮らし方で高耐久な住宅を提供していたはずです。地元の自然、木材、建材、地域性を一番よく知っているにもかからず伝統工法、大断面住宅を放棄していることにあります。「地域思想そのもの」を忘れている事にある と感じています。せめて、間面設計手法で15センチ角柱、15X30センチ集成梁材を使用しては如何でしょうか?

 大手ハウスメーカーの住宅価格は高く、構造体は極限の構造体、軽鉄ではブレース、木造では構造合板で構造補完。決して高耐久とは言えません。サイディングや石膏ボードの張りぼての住まい。こんな住宅は日本にはいらない。米国やオーストラリアなどの海外で頑張ってくだされといいたい。 

 飽きの来ないシンプルなデザイン。工夫すれば木造住宅こそ地元工務店さん活躍の時代です。

 *次回342号は「魅力が無くなった日本の住宅の原因」についてです。引き続きお読みください。

2026・2・27

ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣