266号・施主検査とは?

先日、工務店さん訪問時、近くの現場で、たまたま竣工検査をされていたので、立ち合いをさせていただきました。いまだに、施主竣工検査といって施主様に付箋をお渡して見て廻っていました。よくできていましたが、それはちょっと違うのかなと思いました。

素人のお客様に付箋をお渡しして、検査してくださいなどと言って、それが親切丁寧な会社と思っているとすれば時代遅れです。自動車や電化製品購入時に検査してくださいなどという会社はどこにもないですよね。

施主竣工検査というのは、元々は官公庁や住宅供給公社から工事を受注した後、竣工時に建築、設備のそれぞれの専門官による検査がありました。その分野の専門家なのでハラハラしながら検査を受けていました。検査用に図面、付箋を用意して、その専門官の指摘する内容を図面に書き込み、指摘箇所を手直しする人にもわかりやすくするために付箋を張り付け対応していました。

また、設備の検査では、懐中電灯で床下、天井裏の配管、配線の確認。排水検査ではピンポン球を水と一緒に流し舛に出てくるのを見守っていたものです。たまにゴミが詰まっていたりして出てこないこともありました。電気の検査では、コンセントに通電電球を一つずつ差し込み電球が付くかどうかのチェックがありました。手直し“0”という建物はありませんでした。現場や担当官によっては、付箋だらけの現場もありました。

何度か、そうした検査立ち合いを経験しているとだいたい検査官の特徴がわかってくるので知恵がついてきて対応できるものです。いくら完璧に仕上げても必ず手直し箇所が出てくるということがわかりました。それは、検査官に立場があるということです。手直しゼロでは、公社内では、検査官が甘いということになるので、いくつか手直し箇所が出てきます。そこで検査立ち合い経験を積んでくると、検査官用にあらかじめ手直しがしやすい不具合箇所を用意しておくということができるようになっていました。

ま~、こうしたことができるようになるには、それなりのポイントを抑えている現場管理者だということで、検査官もそういうことを理解して検査されていました。検査官は工事現場を一見して見抜いていたと思います。本当によくできている建物は現場に入った瞬間にわかるようです。

前置きが長くなりましたが、施主検査というのは、そういう慣例が民間業者にも定着したからです。しかし、良く考えて見ますと専門知識のない素人の施主様に付箋を渡して検査をさせるというのは失礼な話です。

まずは、お客様に替って会社として最低基準のチェック表を作成し、見落としのないように社内検査をしっかりして、請負者として責任のもてる住宅(商品)をお引渡しするという姿勢が大切です。それでも、検査漏れや、瑕疵があった場合は速やかに対応処置することが大切です。

引渡し前には、出来具合を見ていただくのは当然かと思いますが、付箋をお渡しして検査をしてくださいというのはどうかと思います。今では、施主検査という言い方はしていません。次のように言っています。

「契約内容、設計図書との照合、確認の上、当社の検査基準において検査をしました。何か、お気付きの点があれば申し出ください。引き渡し後、見落としや瑕疵があった場合は保証書に基づいて対応いたします。本日は、主に建物、設備機器の取扱説明について各担当からご説明をしますので立会いください」で良いと思います。

 ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出正廣