268号・住宅業界第三四半期決算概要
販売戸数減でも値上効果で売上は微減、経常利益は建設原価上昇で減益。
ハウスメーカーの第三四半期決算の公表が出そろったので纏めてみました。
全体概要
米国1~12月(年間) 米国は金利高で6~10月落ち込みが大きく新築住宅着工
戸数は1,460千戸(前年比-5,87%)。
日本は11、12月の着工減で822,8千戸(前年比-3,21%)微減となっています。
・大手ハウスメーカー、中堅タマホーム、大手分譲事業者の第三四半期決算は、
着工数微減も住宅価格値上げ効果で売上は微増。ただ、建設原価高で経常は
大半が減益。
なかでもタマホーム、飯田グループは経常前年同期比が約50%減に拡大。
・分譲型のケイアイ不動産、オープンハウス、アールプランナーも勢いは低下。
分譲各社は地価上昇気配で、売り土地物件が減少で土地取得が難しく、しば
らく業績回復は難しいようです。
・大和ハウスは、米国住宅販売は好調、インバウンドでホテル事業は黒字転換。
売上、利益ともに1割強増加。住宅部門の公表はありません。
・セキスイハウスの第3四半期連結累計期間(2~10月)の業績は、売上高は
(前年同期比2.8%増)、営業利益は(前年同期比7.8%減)、経常利益は(前年
同期比7.9%減)。
*2月に全米12位のハウスビルダーMDC社を7200億円で買収。セキスイが買収
したというよりも米国の住宅はピークアウト。今後魅力が無くなった住宅事業の
売却を米国からの売込みにはまったという感じです。投資金額が大きく業績が
向上しなければ、資金負担となって業績が悪化することが考えられるので、投資
家も覚めてみています。
・住友林業の第3四半期(10~12月)連結累計期間の業績は、売上高(前年同期比
3,8%増)、営業利益は(前年同期比7.3%減)、経常利益は(前年同期比18,2%減)。
住宅部門の経営数値は公表されていないので参考まで。
・タマホームの第2四半期(9~11月)連結累計期間の業績は、売上高(前年同期比
10,0%減)、営業利益は(前年同期比55,5%減)、経常利益は(前年同期比54,0%減)
要因は、注文住宅の販売棟数3,514棟と前年同期比で18.6% 減少したことによる
減収減益となっています。
・ケイアイスター不動産株式会社の第3四半期(10~12月)連結累計期間の業績は、
売上高(前年同期比23,4%増)、営業利益は(前年同期比46,3%減)、経常利益は
(前年同期比50,5%減)。
分譲住宅事業については、月々の住宅ローン返済額が家賃以下となる販売価格
での「高品質だけど低価格 なデザイン住宅」の提供及び、新規エリアへの進出や
規格型平屋注文住宅の売上高が順調で販売戦略が功を奏しているようです。
・飯田グループホールディングス株式会社の第3四半期(10~12月)連結累計期間の
業績は、売上高(前年同期比0,2%減)、営業利益は(前年同期比43,9%減)、経常利
益は(前年同期比55,5%減)。
土地、住宅価格の値上げ効果で販売戸数減でも売上はほぼ達成も営利、経常利益
ともに土地、建設原価上昇で前年比では半減しています。
・中堅の株式会社LibWorkの第3四半期(10~12月)連結累計期間の業績は、売上高
(前年同期比20,9%減)でも営業利益(前年同期比361百万円328,5%増)、経常利
益は(前年同期比383百万円342,4%増)。
販売戦略としては、インショップ型(商業施設内の区画に原寸大のモデルハウス
を建築する)での出店は、「イオンモール幕張新都心」へ新規出店、福岡・大分に
次いで3店舗目。
*注文住宅、分譲住宅ともに売上横ばいでも建設原価上昇によりハウスメーカー
は、利益前年比10%以下。タマホーム、分譲各社は売上微増でも利益は半減して
います。
24年3月期の見通し
下期は、長期金利1%越えを日銀は容認。消費者は住宅ローン金利上昇懸念で慎重
になっているがまだまだ低金利。来春、給与UPが実現するか見極めるまで住宅購入
は慎重になっていると思われます。インフレ率以上に給与が上昇して景気が好循環し
てくると夏ころより、購入し始めてくると思われます。
ただ、お客様は低所得層から中、高所得層へさらに大きく変化していきます。
ハウスメーカーの注文住宅はより高額住宅へシフト。半面、分譲住宅については、
中所得者が購入できる販売価格に設定。建築施工、原価低減効果のある規格住宅
へシフトしてくると思われます。
地方では、平屋住宅の建築が増加しています。
*上記のケイアイスター不動産株式会社の販売戦略は参考にされるといいと思
います。
住宅購入者にとってはこの3月がラストチャンス
3月は、まだまだ低金利。住宅購入予定者にとっては、住宅価格の落ち着き、更に、
ハウスメーカー、分譲住宅各社は下期の売り上げだけは値引きしてでも達成しよう
としてくるので愈々ラストチャンス。
また、住宅各社も来期の受注を確保しておきたい意向から、購入者買い手市場へ。
住宅各社は、販売促進対策を強化しておく必要があります。
現在、米国の住宅ローンは8%目前、日本のバブル時も8%まで上昇。過去の例から
住宅ローン金利が8%は景気失速のサイン。米国は危険水域。
日本の金利上昇は始まったばかりで、景気が好循環サイクルに入ってくると金利
上昇をこなしながら経済は成長へ。
住宅ローン金利も上昇してくれば、景気は好循環へ。バブル時の経験則から6~8%
までは景気は持続(ここ2~3年)すると思います。
住宅以外下期景気の見通し
第三四半期決算ほぼ出そろいプライム上場企業の944社の純利益は、前年同期
比6%増。55%の企業が増益。円安を追い風に自動車、値上げが浸透した食品、イン
バウンド、半導体関連が好調。
一方、中国経済減速の影響を受けた化学、海上運搬、半導体、電機、商社が不振。
国内では建設、鉄鋼が一段落。米国、中国の景気失速の影響は避けられないので、
企業は慎重になってきています。
また、金利上昇気配でドル安、円高傾向になってくると、資源、船舶輸送、輸出関連
銘柄、ハイテク関連の企業業績は低下するので、来期業績見込みは、全体に慎重な
見方に変化しそうです。
株式市況
山高ければ谷深し。まだはもうなり、もうはまだなり。人の行かぬ裏道に花あり。
女性や素人の参加が増えてくると危険水域。株式高値報道が増えると相場の末期。
そろそろスピード調整があったほうが相場は持続すると思います。
1989年12月30日38,915円の高値を付けて、34年経って2月22日、39,156円
で高値更新。株式市場好調に見えるが、プライム市場の大企業、国際企業、自動車、
軍事、半導体関連、高配当などの優良企業数百社の株価が日経平均を押し上げて
いるだけで、スタンダード、グロース市場の中堅企業の業績回復は遅れています。
今後は、上記優良企業から中堅出遅れ株への物色につながるかどうかにかかって
います。2007年リーマンショック時の7,054円の底値からすると5,5倍すでに高値。
今相場はNISA資金の取り込み、素人の株式参入、外資や個人の投資家は買いを
誘って片側で売っています。利益確保したころ、そろそろ調整に入ると思います。
以上は、個人的な見方です。ご参考まで。
ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出 正廣