269号・2025年4号建築特例廃止

2022(令和4)年6月に公布された『脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律』(令和4年法律第 69号)により、原則として、住宅を含む全ての 建築物について、省エネ基準への適合が義務付けられます。 同法では、建築確認・検査対象の見直しや審査省略制度(いわゆる「4号特例」)の縮小が措置され、建築確認の申請手続き等も変更されます。(国土交通省)

4号特例とは?

延べ面積500㎡以下、2階建て以下などの条件を満たす木造住宅は、建築確認の際の構造審査を省略する「4号特例」という制度です。2025年以降、現行法で4号の条件に適合する木造2階建て以下、高さ13m以下、軒高9m以下、延床面積500㎡以下の建築物は、2号または3号に区分されることになります。さらに、300㎡超の建築物は許容応力度計算が義務化されます。

「4号特例」見直しの3つのポイント

1・「建築確認・検査」 「審査省略制度」の対象範囲が変わります。

・新2号建築物

木造2階建て・木造平屋建て延床面積200㎡超は、すべての地域で建築確認・検査が必要。審査省略の対象外。

・新3号建築物

 木造平屋建て延床面積200㎡以下でも、都市計画区域内に建築する際に、建築確認・検査が必要。審査省略制度の対象。

2・確認申請の際に構造・省エネ関連の 図書の提出が必要になります。

・新2号建築物

確認申請・図書+構造関係規定などの図書(新たに提出が必要)+省エネ関連の図書(新たに提出が必要)。

・新3号建築物(木造平屋建て延床面積200㎡以下)

確認申請・図書(現行と同様に一部図書省略を継続)。

*これらの対応がしにくい地方の小規模工務店では平屋が増えそうです。

なので、ハウスメーカー、住宅工務店、工務店の競合が激しくなりそうですね。

3・下記は2025年4月施行予定です。

・「省エネ基準への適合義務化」及び「建築確認・検査や審査省略制度の対象範囲の見直し」に係る改正は、2025 年 4 月に施行予定です。

・今般の法改正に関係する法令(政令、省令、告示)に関する情報、マニュアル・ガイドライン、説明会・ 講習会の開催情報、説明資料・動画など、改正に関する最新情報については、国土交通省のホーム ページでご確認ください。

*4号特例廃止で何が問題か

・4号特例廃止と既存不適格への対応

2025年以降、構造計算が義務化されます。25年以前に4号特例で建てられた案件でも2025年以降、許容応力度計算が成立していない場合は、既存不適格建築物になってしまいます。

例えば、現行法で4号(許容応力度計算をせず)で建築したとします。4号特例の範囲内なので、25年3月までは図書を省略して申請することができます。

ただ、仮に2025年以降にその建物を増改築することになった場合は増築申請をすることになり、改めて既存の部分が基準法に適用しているかを見る必要性が生じます。

この時、壁量計算ではなく許容応力度計算によって審査される場合があります。

なので、明日からでも新法に該当する建物については今から対応しておく必要があります。

建築図書の保存

現在建てられている建物で2025年以降に増改築などを行う際には、関連図書の提出が求められると考えられるため、今の段階から保存をしておく必要があります。

住宅性能を保証するという面からも整合性の取れた図面が必要となるため、作成にかかる時間も増えると考えておく必要があります。

設計者の育成

特に省エネ基準適合対応は国交省によるアンケート調査では半数以上の設計者が現在は検討が出来ないとなっています。そのため工務店側が4号特例についての情報を入手し、理解を深める必要があります。

そして、その情報をお客様でもわかりやすいように説明をするスキルも必要となります。

4号特例廃止による影響

確認審査機関、申請者(請負業者)に影響が出そうです。

確認審査機関でも許容応力度計算をチェックできる担当者が不足していて教育中のようです。

余談ですが、当社は、重量鉄骨住宅、建物が主商品でしたので姉葉構造偽装事件の後、法改正がありほとんどの申請が許容応力度計算対象になり、申請しても確認審査機関に許容応力度計算チェックできる担当者が不足で、大学に構造チェックを依頼していたので、確認許可が出るまで3~6カ月もかかり、着工したくてもできず大きなダメージを受けました。

という事で、今回も申請書が増えることで審査に時間がかかり、確認許可の停滞が起こることも考えられます。05年姉歯構造計算偽装事件の後、07年の建築基準法改正を発端とした建築行政の停滞は回復するのに3年程度掛かっています。

この時に影響を受けたのは構造設計のみでしたが、今回の法改正は設計者、構造、性能担当者が影響を受けます。おそらく、正常化するのに同じくらいの期間(3年程度)が必要になるのではないでしょうか。

経験上、確認申請が混乱することが考えられるので、工期の設定、着工の遅延、資金繰りに注意が必要です。

大手ハウスメーカーは型式適合認定や設計システムが充実しており影響は少ないと思います。最も影響が大きいのは注文住宅を中心に対応している住宅工務店や構造計算事務所や代理確認申請事務所です。

また、施行前には駆け込みでの契約、着工が増えることでしょう。そして、法改正後は反動で売上が激減することが考えられます。

ここで注意しないといけないことは、4号廃止前に駆け込みで現行法で対応してしまうと法施行後にはその建物は既存不適格となり、資産価値が下がってしまう事があれば、説明をしたかしなかったことで訴えられる可能性もあるので、今から対応策の社内周知が必要です。

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第二章 間取り作成のポイント ・流行に左右されない住宅のデザイン 
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第四章 間取りのゾーニング・ 失われゆく文化、室礼空間の提案 
第五章耐震等級3相当の設計 
第六章 SDGs(持続可能な開発目標)と工務店経営 SDGs、大手ハウスメーカーの取り組み事例 SDgs、地元工務店さんの取り組み事例 
第七章コロナパンデミック後新しい間取り・・・売れ筋(15~49坪)プラン60プラン付き 
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ハウスビルダー販売支援研究所 代表 大出 正廣

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